SUさんという相棒 その1
このサイトを一緒にやっているSUさんは、会社の一年先輩である。一言で言うなら「変人」の部類に属する人かも知れない、というよりそうである。私のジャズの先生でもある。音楽の趣味はまっとうである。ディレッタントという言葉が一番よく似合う。
Uさんは新しい物好きである。
老眼が進んだらしく、ある日買ったばかりのハヅキルーペを得意げに見せてくれた。
「Uさん、ぜひ尻に敷かせてください。あれ、やってみたくて仕方ない。」
私のお願いは大抵聞き容れてくれるUさんも、これだけは頑強に拒んだ。まだ持っているかしら。かけているのを見たことがない。尻に敷かれるのを恐れているのか。
またある日、iPodをコードレスのイヤスピーカーで聴きながら悦に入っていた。私は間違いなくなくしてしまうので、まだコード付きを使っている。
「Uさん、毎日酒飲んでいるんで絶対なくてしまいますよ。」
「俺は酒飲んでも酔っ払ったことなどないから問題ない」と嘯く。確かに酒は強いが、きっと今ごろ新しいやつを使っているに違いない。丸善の1万円の背負傘を買ってすぐなくした人である。
Uさんは一流品のコレクターである。
カメラは新旧のライカ、ゼンザブロニカはじめ、超小型スパイ用カメラにいたるまで、20台は持っているんじゃないか。一度だけ、野良猫を映した写真をメールで送ってくれたことがある。買って気に入らなかったカメラを、よく若い人にあげていたが、私には一度もくれると言わない。
またウクレレのコレクションもすごい。世界的に有名なウクレレ・メーカーのもの、これはメーカー・サイトの所有者リストに名前が載っているとのこと。電気ウクレレも初めて拝見させてもらった。演奏はまだ一度も聴いていない。最近やっているのかしら。
イタリアかどこか製の折り畳み自転車、数か月の間会うたびにその話をきかされた。そのフィギュアまで披露しつつその素晴らしさを滔々と語る。私は何の関心もないのだが、ひたすら聞き役にまわる。こっそり買って納戸に隠していたらしいが、あっさり奥さんにばれてしまったそうだ。
昔腕時計にも、また鞄にも凝っていた時期があった気がするが、何だったか忘れてしまった。
Uさんはオシャレである。
ブルックス・ブラザーズのヘリンボーン、チャーチのプレーン・トゥ、ポロのシャツ、残念ながらよく似合う。全身ユニクロの私と比べ、20倍近い違いである。暖パンをはいて会った時には叱られた。着るものは綿かウールでなければいけない。正しいが寒い。数年前東富士演習場に公開展示を見に行った時には、迷彩のシャツで現れた。Uさんは平和主義者だが兵器マニアでもある。
Uさんの英語力は日本でもトップ・クラスだと思っている。
Uさんとこのサイトを作ることになったきっかけは、ドナルド・キーン訳の『おくの細道』である。当時上海にいたUさんに、毎日のように質問のメールを送り、それに答えてもらった。Uさんの英語の力に驚かされた。
Uさんのかつての上司フサコさん、この方はずっと英語で海外の仕事をしてきた人である。
「私もUさんのようにすらすらと英語が読めるようになりたい。」
フサコさん、一言「無理よ。」笑われた。
「どうしてですか。」
「だぁーって、中学生のころから毎週2、3冊ペーパーバックを読み続けてきたのだから。」
自力本願をやめた。
これがガードルストーンの共訳とGSQ-SUAのはじまりである。
(その2に続く)