しらみの話

「しらみつぶし」という言葉がある。言葉自体は「しらみつぶしに探す」という風に今でも使われているが、さて、実際に「しらみつぶし」を実際に知っている人がどれだけいることだろう。若い人の中には「しらみ」という言葉すら知らない人がいるに違いない。ところが私は「しらみつぶし」を実際に知っているのである。

「ケンベンのこと」にも書いたが、私は昭和30年代に小学生時代を過ごした。そのころの小学校では一斉検査があり、しらみが「わいた」子供はDDTやBHCのような白い粉薬を頭に噴霧されていたそうだ。「そうだ」というのは2歳上の姉の世代ではそういう子がいて、一日中家に帰るまでまっ白頭のままだったらしい。しかし私の代ではもうそういう光景を目にすることはなくなっていた。生活向上のスピードは相当速かったのだろう。それにしても特定の生徒の頭に白い粉を噴霧するなど、すごいことをするものである。おそらく進駐軍の施策の遺産だったのだろうが、今ならばすぐにいじめにつながることだろう。

 平成になってからの話である。わが子の通う学校でしらみが発生し、うちの子もやられてしまった。給食当番の三角巾で広がったらしい。学校からの通達があり薬局で〇〇〇という薬を買って頭に噴霧するように、とのことであった。
 さっそく購入し処置したが、これがさっぱり効かない。昔の殺虫剤に比べ、人体への安全性のため毒性が弱くなっていただろうし、しらみの方も耐性が高まっていたのかも知れない。いくらシャンプーしても目だった変化は見られない。初めて拝見するしらみ殿は髪の毛の林の中を悠々と闊歩しておられる。

 これに喜んだのが大正末生まれの義母である。「ああ、なつかしいわね。子供のころは誰だってこうやってたのよ。」と言って左右の親指の爪の背でプチッと潰す。私など気味が悪くて、とても真似する気になれない。しらみ殿ご本体のほか、髪の毛の根本に黄色いものがついている。卵なのだそうだ。これはもう恐怖以外の何ものでもない。

 どうにか我が手を汚さずに退治するいい方法はないか、随分考えた末、ついに思いついた。アロエである。「医者いらず」と言うではないか。
 さっそくベランダから新鮮なアロエを数本収穫し、とげを取り、洗って皮のついたままミキサーにかける。緑色のどろどろをそのままたっぷり頭に塗り付ける。サランラップを巻き付け、その上からバス・タオルでターバンのようにぐるぐる巻きにする。そのまま一晩寝せる。
 さて、翌朝である。おそるおそるターバンをはずしていく。最後のラップをはずすと、まるでデップで固めたような頭である。洗髪すると、ついにやった、完全撃退である。

 しらみがわいた方は、ぜひこのやり方でやってみていただきたい。たった一晩で十分である。(❊)

    (❊)肌の弱い方はご注意ください。自己責任でお願いします。

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