ウィンナ・シュランメルン その5

7.その他ウィーンのグループの演奏

 やはり90年代のビーダーマイヤー・アンサンブルやアンサンブル・ウィーンの演奏がピークだったのだろうか、2000年代に入ると新たな録音はほとんどなくなってしまった。私が聴いたのはウィーン・ゾリステン四重奏団の『シュトラウス親子とJ・ランナー』(PreiserRecords)とウィーン舞踏四重奏団の『古都ウィーンからの舞曲集』(NAXOS)の2枚だけである。Ensemble Wienはメンバーが入れ替わって継続しており、CDも日本での実況のものがあるそうだが、私は聴いていない。
 これらのシュランメルン・スタイルの3演奏グループは、いずれも女性がメンバーに加わっている。特にウィーン舞踏四重奏団は、第2ヴァイオリンおよびコントラバスと2楽器が女性である。

シュトラウス親子とJ・ランナー

 ウィーン・ゾリステン四重奏団の『シュトラウス親子とJ・ランナー』は2000年の録音、曲目は、その他のグループとほとんど重複するものはない。80年代以降に録音された曲目は、それ以上の演奏は困難と判断しているのではないか、とまで考えたくなる。おそらくは考え過ぎだろうが。メンバーはデータ不足で、どのような経歴の人たちがよくわからないが、ウィーン・フィルメンバーの演奏とは、若干毛色が違うように感じられる。すっきりした演奏である。女性が加わっていることもあるのだろうか、これまでの男性のみのグループの演奏にはない、繊細さがあるように感じるが、その反面、弱弱しさがあるわけではないものの、若干の物足りなさを感じる曲もある。この一枚は私の好きな部類のものである。

古都ウィーンからの舞曲集

 翌2001年に録音されたのが、ウィーン舞踏四重奏団の『古都ウィーンからの舞曲集』である。第1ヴァイオリンのラインホルト・ラングはウィーン国立歌劇場管弦楽団メンバー、第2ヴァイオリンのカティア・ラングはその娘である。ビオラはマルティン・フックスも同じく国立歌劇場管弦楽団員である。コントラバスがガブリエラ・トゥヴェタノヴァが女性である。コントラバスが女性で本当に大丈夫かと心配になるだろうが、一聴すればこの奏者のすばらしさに驚くだろう。曲目は、ビーダーマイヤー・アンサンブルなどとの重複を気にせず、のびのびと奏している。すばらしい1枚である。

 これ以降、ヴァイオリン2本、ビオラ、コントラバスによるシュランメルン・スタイルの録音はほとんどなされていないのだろうと思う。管楽器やギター、アコーディオンなどを加えた、ホイリゲ風シュランメルンが主流になったようである。メディアもYouTubeなどである。音楽愛好者層が大きく変化したこともあるだろうが、少々寂しさも感じる。

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