2024年7月24日 / 最終更新日時 : 2024年7月24日 GS 文学・小説 毎月のうた⋯⋯七月 歳時記的なものを作る人にとって、七月はなかなか難しい月ではないかと思う。二十日あたりまでは梅雨、それ以降はもう八月といっていいような真夏である。風物詩になりそうな趣きのあるものもない。三好達治、大岡信ともに、七月には少 […]
2024年6月29日 / 最終更新日時 : 2024年6月29日 GS 文学・小説 三島由紀夫の『仙洞御所』 もう随分前のことになったが『古美術読本 庭園』という文庫本を読み、その中の一篇、三島由紀夫の「仙洞御所」に衝撃的な感銘を受けた。同書は、その他に志賀直哉「竜安寺の庭」、井上靖「桂離宮」、大佛次郎「修学院離宮」をはじめ、 […]
2024年6月26日 / 最終更新日時 : 2024年6月26日 GS 文学・小説 毎月のうた⋯⋯六月 水中花と言つて夏の夜店に子供達に売る品がある。木のうすいうすい削片を細く圧搾してつくつたものだ。そのままでは何の変哲もないのだが、一度水中に投ずればそれは赤、青、紫、色うつくしいさまの花の姿にひらいて、哀れに華やいでコッ […]
2024年5月21日 / 最終更新日時 : 2024年5月22日 GS 文学・小説 毎月のうた⋯⋯五月 「五月の朝の新緑と薫風は私の生活を貴族にする」 (『月に吠える』「雲雀料理」端書より) これが、あの『月に吠える』の中にあることが不思議なほど美しい、最高の五月賛だ。 今年は桜のあと、いっせいに草 […]
2024年4月30日 / 最終更新日時 : 2024年4月30日 GS 文学・小説 毎月のうた⋯⋯四月 入学などの人事を除けば、日本人にとって四月はすなわち桜だ。それしかない。近年温暖化の影響か、桜は三月のものになっていたが、今年は四月に戻ってきた。連日、テレビのニュースでは、トップで桜開花を待ち受けている。大さわぎだ。 […]
2024年3月18日 / 最終更新日時 : 2024年4月30日 GS 文学・小説 毎月のうた⋯⋯三月 毎年二月末になると、昨年仕舞った雛人形を取り出す。孫娘のためである。娘が家が狭いと言って、我が家を物置きにしているためだ。 このお雛さんが我が家に来てからもう四十年になる。妻の実家から娘の誕生祝いにもらった一段飾りの木 […]
2024年2月29日 / 最終更新日時 : 2024年3月2日 GS 文学・小説 毎月のうた⋯⋯二月 今年はオリンピックで閏年である。閏年の二月というと、まず思い出す本がある。チェコの作家カレル・チャペックの『園芸家12カ月』である。二月の章から引用しよう。 用心しなければならない。昼間は甘言をもって灌木の芽をおびき […]
2024年1月30日 / 最終更新日時 : 2024年2月1日 GS 文学・小説 毎月のうた⋯⋯一月 一年十二カ月、各々の月の詩歌を選録したアンソロジーは、これまでに数冊は読んだはずだが、今手元にあるのは、三好達治の『諷詠十二月』と大岡信の『芝生の上の木漏れ日』(『瑞穂の国うた』所収)だけである。私はこれまで、この手の […]
2023年12月31日 / 最終更新日時 : 2024年1月30日 GS 文学・小説 O・ヘンリー『警官と讃美歌』 原作と映画 2 最後の教会の映画でのシーンは、原作から大きく作り変えられている。原作を引こう。 だが異様なほど静まり返った角に来て、ソーピーは立ちどまった。そこには、古風な、不規則な恰好の、破風のある古い教会が立っていた。紫色の窓から […]
2023年12月31日 / 最終更新日時 : 2024年1月22日 GS 文学・小説 O・ヘンリー『警官と讃美歌』 原作と映画 1 福島申二氏の朝日新聞連載「斜影の森から」での『O・ヘンリー 大都会の名もなき鼓動』(12月22日夕刊)は、元天声人語執筆者の筆になるだけあって、優れたエッセイであると感じた。 少々長くなるが、その冒頭、まくらの部分を […]