2023年3月20日 / 最終更新日時 : 2024年1月23日 GS 文学・小説 山本周五郎 『青べか物語』の「経済原理」 その2 我々は作者とともに「美しいものは何もない」浦粕の人々に対し、その狡猾さ、醜悪さを見、その無知に蔑みの目を向け、優越者の立場から憐れみの思いさえ抱きながら、この物語を読み始める。しかし、次第に我々の目は作者の目同様、それ […]
2023年2月28日 / 最終更新日時 : 2024年1月23日 GS 文学・小説 山本周五郎 『青べか物語』の「経済原理」 その1 久しぶりに『青べか物語』を通読して、勘違いに気づいてしまった。何度も読んでいるのだが、適当にいくつかの話を択んで読んでいたためだろうが、この主人公「蒸気河岸の先生」は小学校の教師であり、その一方で画家や作家稼業をしてい […]
2022年10月21日 / 最終更新日時 : 2022年12月3日 GS 文学・小説 梶井基次郎 『城のある町にて』 伊勢に家族旅行をすることになった。インテリの上司から「松坂城址に本居宣長の鈴屋が残っており、彼が著作をした机がある。こんな小さな机で学んでいたのか、ときっと感動するから」と訪れるようアドバイスをもらった。もう二十数年前 […]
2022年9月28日 / 最終更新日時 : 2024年3月13日 GS 文学・小説 『鶉衣』の「問菊辞」 ここ二年ほど、秋に家族の不幸などがつづき、鉢植えの菊をすっかり弱らせてしまった。今年の春先から水やり、施肥などの世話をしたのだが、夏の猛暑でとうとう枯らしてしまった。やはり普段の手入れが雑だったためだったのだろう。かわ […]
2022年9月14日 / 最終更新日時 : 2022年12月29日 GS 文学・小説 『鳥の手帖』 松島と象潟、『おくのほそ道』表裏を代表する「美」の象徴の地である。松島では芭蕉は句を残さず、曾良が 松島や鶴に身をかれほゝとぎす 曾良 と詠んでいる。一方象潟では、芭蕉も 象潟や雨に西施がねぶの花 という巻中 […]
2022年8月30日 / 最終更新日時 : 2022年9月25日 GS モーツァルト 小林秀雄の『モオツァルト』~不協和音四重奏曲(2) 音楽を論ずることと、音楽を語ることは全く別のこと別種の仕事である。前者は頭、後者は耳の問題だ。 一体小林秀雄は『モオツァルト』で本当にその音楽について語っていたかどうか、疑問に感じた人も多いことだろう。取り上げられた […]
2022年8月12日 / 最終更新日時 : 2022年9月25日 GS モーツァルト 『ある微笑』のモーツァルト~不協和音四重奏曲(1) サガンのことは良く知らないが、昔読んだ『ある微笑』は不思議に心に「引っかかった」小説である。あらすじを訳者朝吹登水子氏の解説から引用させていただく。 「“ある微笑”は、ドミニックという少女の恋物語である。人生に倦怠して […]
2022年2月18日 / 最終更新日時 : 2022年9月25日 GS 文学・小説 萩原葉子『父・萩原朔太郎』その2 2. 三好達治のこと 「晩年の父」に続き「幼いころの日々」というエッセーが収録されている。さすがに著者の筆は、少女のものではなく、文章家のものに近づいているように思われる。 私はその中で三好達治が登場する、次の場面が大 […]
2022年2月18日 / 最終更新日時 : 2022年9月25日 GS 文学・小説 萩原葉子『父・萩原朔太郎』 その1 1. 少女のまなざし 父親を描き出す娘のまなざしは優しくも残酷である。身も心も崩壊寸前だった晩年の詩人の姿は衝撃的なものであった。下手な字ながら上機嫌で「広瀬川白く流れたり」と色紙をしたためる姿。日本的なものへの回帰と […]
2022年2月1日 / 最終更新日時 : 2022年9月25日 GS 文学・小説 長野まゆみの『夏帽子』 食べられる石「水晶石榴」、吾亦紅に人魚の鱗を差し込んで火をつければ赤くともる提灯、海水を汲む北斗七星、北極圏で採取した氷河のかけらの中に顕微鏡で観察できる微生物氷河星〔ポーラースター〕、白檜曾に吊るして晒す瑠璃色の電球 […]